世界を見渡してみると、健康で長生きする人が多い長寿地域と呼ばれる場所がいくつもある。そこに住む人々には「血管死」が少ないと言う共通の特徴がみられる。これは「人は血管から老いる」と言われる事実とも合致する。血管死の原因となる主な病気は脳血管障害(脳卒中:脳梗塞など)と虚血性心疾患(心筋梗塞)である。かって脳卒中は、長らく日本人の死因の第一位を占めていたが、その後、癌や心臓病にその座をゆずった。
しかし、最近、再び第2位に浮上してきている。最近の、脳卒中の特徴としては脳出血に変わって、脳梗塞が増えてきており、高齢化社会を迎え、これがさらに増加してくるものと予測されている。すなわち脳卒中の軽症化がみられるが、この場合、死にいたることはない代わりに、例えば、脳梗塞により負った障害はもとに戻らないことから、それによって負った麻痺などの障害(ハンデイキャップ)は生涯に及んで人を苦しめることになり、これが最も問題となる。
我が国(日本)における血管障害の危険因子として未だ、最も重要なものは「高血圧」である。さらに近年、食生活の西欧化、すなわち脂肪分の多い食事、加えて豊食の時代と呼ばれるとおり過食、運動不足などからくる「高脂血症」と「糖尿病」が増加したことによる動脈硬化性疾患が増えている。例えば、糖尿病は血管の老化を10年早めると言われる。つまり不適切な生活習慣や食習慣が血管の老化を早めるのである。すなわち血管障害の予防にあたっては、食生活を含めた生活習慣の問題ととらえ、これを改善してゆくことが大切である。
脳卒中すなわち脳血管障害は、大きく2つに分けることができる。ひとつは血管が破れて出血する脳出血などと、もうひとつは脳の血管が詰まってその先の脳に血液が流れなくなって起こる脳梗塞(脳血栓、脳塞栓)である。
脳梗塞になるにあたっては、まず、危険因子と言うものがあって、それが長年にわたり続いた結果、それが積み重なって、ついに発病にいたるというのが普通であり、危険因子としては、高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙などを挙げることができる。
血管のトラブルには、それが詰まる場合と破れて出血する場合とがあるが、まず、詰まるには太い血管に起こる粥状硬化(アテローム硬化)と穿通枝と言われる細い血管に起こる細動脈硬化があり、粥状硬化の原因は高脂血症であって、細動脈硬化の原因は高血圧であり、それぞれ危険因子が異なる。次に破れる場合には、細い血管に細動脈壊死が起こり、その危険因子は高血圧である。
脳梗塞とは、脳の血管が詰まり、その先に血液が流れなくなって脳細胞が壊死を起こす病気であり、高血圧が続いて穿通枝と言う細い血管がつまるラクナ梗塞と呼ばれるものと、高脂血症、すなわちコレステロールの高い状態が長く続き、皮質枝と言われる太い血管がつまる皮質枝梗塞と呼ばれるもの、および心房細動という不整脈の結果、心臓内に血液の塊が出来て、それがはがれて脳の血管の方に流れていった結果、血管が詰まる脳塞栓と言うものに分かれる。この心房細動が年配の方に増えていることから脳塞栓も増加している。いずれにしても危険因子の中で、未だ最も重要なものは高血圧である。血圧が高くても痛くもかゆくもない。しかし、高血圧を放置していると、早晩、脳、心臓、腎臓などの合併症を生じることになる。
上田による高血圧患者の5年間の生存率の研究では、全く治療を受けなかった場合、その生存率は75%に下がるという結果が得られており、また、アメリカにおける高血圧の治療経過すなわち5年間での重篤な脳血管障害もしくは死亡例の発生頻度は、未治療群では、これが35%に上るという結果が得られている。1日5グラム塩分摂取を減らせば、5から10血圧を下げることが出きる。
血圧を下げるポイントは以下のとおりである。
1、塩分を控える。
2、体重を下げる。
3、生活に積極的に運動を取り入れる。
4、カリウムの摂取を増やす。
5、アルコールを控える。
ところで塩分摂取は1日、7〜8グラム以下とする。塩分摂取で問題となるのは3大調味料と漬物、味噌汁である。さらに麺類のだし汁は残す。かまぼこ、ハム、ソーセージなどの加工食品やインスタント食品は控える。
香辛料や酢、レモン、ゆずなどをうまく使って、塩分を減らす工夫が大切である。
体重が1キロ増えると、最大血圧が1.6、最小血圧が1.3上昇する。4キロやせると血圧の薬が一つ、いらなくなる。
アルコール摂取量と血圧は正比例しており、アルコール摂取量が増えると血圧は上昇する。
長寿地域の研究では、住民の血液中のコレステロール値が低い、尿中のナトリウム排泄量が少なく、カリウム排泄量が多い。タウリンの排泄量が多いなどの特徴が見られる。ナトリウム排泄が少ないと言うことは塩分摂取が少ないことを意味し、カリウム、タウリンの排泄量が多いと言うことは、それぞれの摂取が多いと言うことを意味している。カリウムには血圧を下げる作用があり、野菜や果物、海草類に多く含まれている。タウリンは魚に多く含まれていて、血圧を下げたり、血液中のコレステロールを下げる作用がある。そして、その摂取量が世界一多いのは日本であって、本邦の平均寿命が世界一であることは、ご承知のとおりである。しかし、このところ、その摂取量は低下してきている。
世界には高血圧のものがほとんど見られない民族がいくつか存在する。その居住地は、いずれも大陸中央部の砂漠地帯など塩分を摂取しようにも、塩分がほとんど手に入らない地域であり、住民の塩分摂取量はきわめて少ない。一方、ネパールの住民は塩分の多いバター茶を常用しているにかかわらず血圧が低いものが多い。これは起伏の多い土地の移動、すなわち上がり下がりで、普段からの運動量が豊富であるからと考えられている。
動脈硬化を起こすにあったっては、血液中のコレステロールが血管の内側の壁に貯まり血管が狭くなってくる訳であるが、まず糖尿病、高血圧、喫煙などで出来た血管の内側のキズから動脈硬化を促進する作用のある血液中の悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が血管壁内に入りこみ、次に、このLDLコレステロールが活性酸素の働きで、酸化LDLコレステロールになると言う風にして動脈硬化が進む。
すなわち動脈硬化を防ぐには血液中のLDLコレステロール値を下げ、動脈硬化を防ぐ作用のある善玉コレステロール(HDLコレステロール)値を上げること、そしてLDLコレステロールが血管壁に沈着する際に働いている活性酸素の発生を抑えるような食生活とすることが大切である。ストレスや喫煙は活性酸素の発生を増加させる。血液中のコレステロールの80%は内因性と言って、食事から直接摂取したコレステロールに由来するのではなく、体内(肝臓)で作られたものであり、その材料となるものは、食事中の、いわゆる動物性脂肪(飽和脂肪酸)である。従って、血液中のコレステロール値の高い者は、動物性脂肪の摂取を控え、植物性脂肪(不飽和脂肪酸)の摂取を増やすことが大切である。
なお、近年、本邦における若年者の血液中のコレステロール値が、欧米のもののそれより高値となっていることから、今後、心筋梗塞や脳梗塞が増加してくる可能性が高く、懸念されているところである。マンナン、ペクチンなどの繊維質を摂取することにより腸管からコレステロールが吸収されるのを防ぐことが出来る。
グリンランドのエスキモー達の主食は、脂肪分の多いアザラシの肉であるにかかわらず、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患にかかるものが少ない。その理由はアザラシが主食としている魚の成分を、アザラシの肉を食べることによって、同時に摂取していることになるからである。北の海に住む魚(背の青い魚)の油には、EPAやDHAなど、コレステロールを下げたり、血液の流れを良くする成分が豊富に含まれている。
第二次世界大戦中のノルウエーでは、食料不足のためやむなく魚の消費量が増えたが、その結果、虚血性心疾患による死亡率が大きく減少した。
中国内陸部の長寿村では、脂肪の多い食事であるにかかわらず血液中のコレステロール値が低い。その理由はタウリンが豊富に含まれる動物の内臓を同時に摂取しているからである(いわゆるホルモン)。
中性脂肪が高くなる2大原因はアルコールと肥満、すなわち食べすぎであり、中性脂肪が増えるとHDLコレステロールが減少する。
動脈硬化を防ぎ、脳梗塞の予防に役立つ食べ物を以下に紹介する。
1、血管のしなやかさを保つ食べ物
大豆: リノール酸がコレステロールを下げる
柑橘類: ビタミンCで血管を丈夫にする
酢: クエン酸に強力な坑酸化作用
そば: ルチンが高血圧や動脈硬化に効果
青魚: EPAやDHAが豊富
2、血栓の予防に役立つ食べ物
ニンニク: アリシンが血栓を出来にくくする
たまねぎ: 血栓を出来にくくする
納豆: ナットウキナーゼが血栓を強力に予防
3、坑酸化作用を持つ食べ物
赤ワイン: ポリフエノ―ルが血栓を溶かす
緑茶:カテキンが血管の若さを保つ
ゴマ: ビタミンEが坑酸化作用
トマト: βカロチンがビタミンCとともに坑酸化作用
にんじん: βカロチン
4、コレステロールを下げる作用のある食べ物
しいたけ: 肝臓でのコレステロールの代謝を促す
ヨーグルト: 乳酸菌がコレステロールを排出
貝類: コレステロール減少にタウリンが効く
海草 、コンニャク、切り干し大根、サツマイモ:
食物繊維がコレステロールの体外への排出を促進
健康で長生きするためのポイント
腹八分目とする。
塩分を控える。
動物性脂肪の摂取を控える。
植物性脂肪の摂取を増やす。
魚、野菜を積極的に摂取する。
生活に運動を取り入れる(歩くのが良い)
注意:コレステロールは低すぎてもいけない。そこで、良質のたんぱく質を十分に摂取